胃癌|福岡大腸カメラクリニック|消化器内科・内視鏡内科・胃腸内科

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胃癌

胃癌|福岡大腸カメラクリニック|消化器内科・内視鏡内科・胃腸内科

胃癌(Gastric cancer)

胃の内腔側の粘膜から発生する上皮性悪性腫瘍です。最大の原因はヘリコバクターピロリ菌(H.pylori)です。胃癌罹患リスクの把握と最大の胃癌抑制効果を得るためにも20代で一度は胃カメラ検査とピロリ菌検査を受けることをお勧めします。

疫学(罹患率・年間死亡者数)

日本において世代が若くなるほどピロリ菌の未感染者割合が高くなっているため、将来胃癌は減少し続けていきますが、まだまだ団塊世代などでのピロリ菌の感染率は高く、まだ胃癌は国内では新規発生数も死亡者数も3位となっています。ピロリ菌未感染の方にとってはそれほどリスクは高くありませんが、未除菌例はもちろんのことピロリ菌の既感染者や除菌後の方も胃癌リスクが高い方ですので大腸カメラを受けられる際には同時に胃カメラ検診も受けていただくことを推奨しております。胃癌と大腸癌はきちっと内視鏡でのフォローアップを受けていれば多くの方は亡くならずに済みます。胃癌と大腸癌をカバーすることが効率よく寿命を延ばすことにつながることは下記グラフを見ていただければわかると思います。

疫学(罹患率・年間死亡者数)

実は胃癌は少し前までは大腸癌より亡くなる方が多かったのですが、胃癌が減少傾向で大腸癌が増加傾向にあるため逆転しました。日本の高齢化の影響を除いて日本の人口構成を世界人口比に年齢調整をかけてみると男性も女性も胃癌のリスクが激減して生きていることが分かります(下図)。日本での胃癌検診とピロリ菌除菌治療普及の効果が出てきているということです。

日本における胃癌の疫学

しかし残念なことに現実の我が国は世界に類を見ないほどの超超高齢化社会となっております。その影響でピロリ菌有病率の高い世代が人口の大半をまだ占めるため日本ではまだまだ胃癌が多く発生しています。それの影響も団塊世代と呼ばれる方々がほとんどいなくなる2050年頃からは胃癌の発生しやすい年代のピロリ菌感染率も激減してくるため胃癌の死亡者数は激減してくる可能性があります。

原因

胃癌の最大の原因はズバリ、ヘリコバクターピロリ菌(H.pylori)です。ピロリ菌感染者は未感染者の10倍以上の罹患リスクを負うことになります。

胃癌で命を落とさないようにするために心がけるべきこと

個人の胃癌リスクを知り、個別に適切な検診を受けることにつきます。
胃癌のリスクはピロリ菌感染歴の有無、除菌年齢、萎縮性胃炎の程度、年齢で推定できます。リスクが高ければ毎年胃カメラを受けた方がよいですし、リスクの低い方が胃カメラを頻繁に受けても恩恵を受ける可能性は低くなります。しかし、注意していただきたいのは、胃カメラは胃だけをみているわけではないという点です。喫煙や飲酒習慣は口腔・咽頭・食道癌のリスクを高めます。ピロリ菌がいない方は逆流性食道炎の確率が高くなりますが、強い逆流性食道炎のためバレット食道癌ができることもあります。それらの癌も胃カメラで見つかることを忘れないでください。数は胃癌より圧倒的に少ないですが、たちの悪さは胃癌より上です。

Point1:ピロリ菌の世代別有病率を知る

胃癌は生まれた時代によって感染率/有病率が異なります。高齢になればなるほどピロリ菌の感染率は高くなります。2024年現在の90歳前後の方は70-80%とほとんどの方がピロリ菌に感染していましたが、2024年現在の中高生の若い世代は数%の感染率でほとんどピロリ菌に感染していません。80歳前後は約50-60%、70歳前後は約40-50%、60歳前後は約30-40%、50歳前後は約20-30%、40歳前後は20%弱、30歳前後で約10%、自分が何年生まれかを意識して必要に応じてピロリ菌検査を受けてください。若い世代でも胃癌になったご家族と幼少期をともにした方や、両親のどちらかが自分が生まれた後にピロリ菌を除菌したという情報がある方は積極的にピロリ菌検査を受けていただいた方がよいと思います。

Point2:年齢別胃癌罹患者数を知る

下図は日本での年代別の胃癌死亡率です。当然高齢に行けば行くほど高くなっています。ピロリ菌有病率は激減してきていますが、まだまだ胃癌が発生しやすい年代にピロリ菌既感染の方、除菌後の方、現感染の方がたくさんいらっしゃるため、減っているとは言え、まだまだ高い率を示しています。死亡率はどの年代も下がっているのですが、世界最高レベルの高齢化率を誇る日本では胃癌の発生数の実数はまだまだ高い値を示しています。しかし、胃癌検診の効果とピロリ菌除菌治療の普及は日本の胃癌の疫学にとってとても良い効果をもたらしていると考えられます。ピロリ菌有病率が高い世代がほとんどいなくなる2050~2060年頃には急激な人口減少とともに胃癌で亡くなる方は激減してくる可能性があります。

年代別胃癌発生数

検査

胃カメラ検査

咽頭・喉頭・食道・胃・十二指腸の中を見ることができる検査です。胃だけ見る検査ではありませんので、胃癌検診でその他の部位の癌が早期発見されることもあります。
経鼻胃カメラは細いカメラを鼻から入れる検査です。鎮静剤を使用せず咽頭麻酔のみで行う場合などは口からの内視鏡よりも嘔吐反射が少なくなります。しかし、無視できない頻度で鼻出血や鼻の疼痛などが発生するため当院ではオススメしていません。細いカメラで行うのであれば少量の鎮静剤と咽頭麻酔を併用した口からの内視鏡がオススメです。歯がぐらついている方など特殊な場合のみ経鼻内視鏡の方がオススメです。当院では細径内視鏡を採用しておりますが、全例経口挿入で行うこととしております。経鼻内視鏡は行っておりませんので歯がぐらついている方などどうしても経鼻内視鏡で受けたい方は他院様で受けるようお願いします。
胃カメラ検査が胃癌を発見する上で最も優れた検査ですが、すべての胃癌が見つかるわけではありませんのでご注意ください。早期癌、特にピロリ菌除菌後の胃に発生する胃癌は胃カメラでもわかりにくいことがあります。そのため胃癌ができる可能性が高い方は毎年胃カメラを受けておいた方が無難です。

胃透視検査/バリウム検診

当院では胃透視検査は行っておりません。職場での集団検診や市町村の胃癌検診では胃透視検診が行われることがあります。胃透視検診で異常が疑われた場合、胃カメラ検査が結局必要となります。さらに胃透視検診ではバリウムが排泄されるまでの間、腹部の不快感を感じたり、便秘になったりすることがあります。

治療法

EMR/ESD 早期胃癌、特に粘膜内癌の治療法です。国内のガイドラインでの早期胃癌のESDの絶対適応病変は①潰瘍を伴わない分化型癌優位の粘膜内癌(サイズ規定なし)、②潰瘍を伴った分化型癌優位の粘膜内癌で3cm未満、③潰瘍を伴わない未分化型癌優位の粘膜内癌で2cm未満となっており、①で2cm未満の場合はEMRも考慮できるとなっております。これらの適応はリンパ節転移リスクが1%未満のものです。これに該当しない場合でも術前診断の不確実性から相対適応と考えESDを行う場合もありますが、術後病理組織診断にて正確な評価を行い、根治度に基づいた対応が必要となります。また、絶対適応病変と考えESDを行ったものの術後診断で根治度がeCuraAとならず追加外科切除等の追加治療を考慮する場合が少なからず経験されます。

外科的手術

幽門側切除術(胃の2/3を切除し、再建する手術)、胃全摘術(胃を丸ごと切除し、再建する手術)、いずれも所定のリンパ節を郭清します。開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術のいずれも切除する範囲や再建方法は同じです。

化学療法

抗癌剤を使用する治療法です。殺細胞性抗癌剤、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬などを組み合わせて行います。メニューのことをレジメンといいますが、高い有効性を示したものから順番に使用することとなっています。効かなくなってきたら次のレジメンに切り替えてできるだけ腫瘍の成長を抑制するという治療です。稀に完全に腫瘍が消えることもありますが、基本的には化学療法は延命が最大の目標であり、治癒を目指す治療ではありません。

緩和ケア

癌に伴う様々な苦痛を取り除いていく行為すべてを緩和ケアといいます。癌による痛みを取るために医療用麻薬を使用することを緩和ケアだと理解されている方もおりますがそれは誤りです。緩和ケアは癌と診断された患者様皆様に最初から適応されるべきものです。癌性疼痛がなくても心の苦悩や不安は癌と診断された方には必ずあります。社会的な問題や宗教的な苦悩への対応も含まれます。癌という存在によって発生する苦痛や苦悩の全てを和らげることが緩和ケアであり、とても高度な知識と技術が必要です。

胃カメラ

下の写真は胃癌の写真です。ご気分が悪くなられる方は飛ばしてみないようにしてください。左が進行胃癌です。右が早期胃癌です。早期胃癌は2、3枚目は大き目の病変を選びましたが、ぱっと見隆起部分に目が行き小さなポリープに見えるかもしれませんが目を凝らしてみると粘膜模様の異なる平坦病変がその倍以上の大きさに広がっています。いかに見つけるのが難しいかわかっていただけますでしょうか。実は世のエキスパートと呼ばれる著名な内視鏡医ですらも3割は見逃していると思うとおっしゃっております。つまり「胃癌はありませんよ」と断言できる内視鏡医は世の中にいないということです。見えるときもあれば見えない時もあるというのが早期胃癌です。もちろん早期胃癌で見つけなければいけませんが見えないことがあるような早期胃癌の多くは、1年後見てもまだ早期胃癌であることが多いため、1年後に少し目立ち始めてから見つけても遅くはありません。そのため胃癌ができるリスクが高い、ピロリ菌感染者や除菌後まだ10年以上を経過していない方は胃癌が発生しても早期で見つけられるよう毎年の胃カメラ検診をお勧めします。進行胃癌は誰にでも見つけられますが、見つけた時には「時すでに遅し」となる場合もあるため、胃癌に関しては症状が出てからではなく症状が出る前に早期胃癌の状態で見つけてもらえるようにする努力をしてください。

胃癌