便秘|福岡大腸カメラクリニック|消化器内科・内視鏡内科・胃腸内科

〒810-0022福岡県福岡市中央区薬院4丁目6-9 浄水メディカルビル2階
Tel,092-753-6162
ヘッダー画像

便秘

便秘|福岡大腸カメラクリニック|消化器内科・内視鏡内科・胃腸内科

便秘症とは「便通異常症診療ガイドライン2023慢性便秘症」で「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便・排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義されています。毎日排便があっても便秘症に当てはまる場合があります。逆に排便が週1回しかなくても症状がなく、毎回すっきりスムーズにでる場合は便秘症とは言いません。
慢性便秘症とは、「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたし、身体的にも様々な支障をきたしうる病態」と定義されています。
年齢とともに排便量も回数も多少は減少します。若いころのように毎日出ることを正常とばかり思っていると、ついつい症状もないのに便秘薬の使用に走ってしまうかもしれません。市販の便秘薬の大半が大腸刺激系の下剤で、長期使用すると薬剤性便秘をきたし得る薬になります。

便秘は心血管疾患、パーキンソン病、腎疾患のリスクを高める

便秘は、狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患や脳梗塞などの虚血性脳血管障害などの発生リスクを上昇させたと報告があります。便秘がある人の方が、死亡リスクが高いことが報告されています。慢性便秘症は日常生活への支障が軽微でも治療はしておいた方がよいでしょう。

慢性便秘症の診療フローチャート

「便通異常症ガイドライン2023慢性便秘症」のフローチャートをさらに簡略化したフローチャートを下記にお示しします。簡単に言うと、まずは便秘の原因を探せということです。特に発見が遅れると致命的となるうえ、ありふれた誰もがなりえる疾患である大腸癌を見落とさないことが大切です。大腸癌以外にも便秘の原因となる疾患や薬剤は多数存在します。それらを鑑別したうえで、生活習慣改善や食事療法を行い、便秘薬で排便コントロールを行うという流れになっております。便秘薬の使用順や使用方法は病態毎に推奨がありますが、絶対的なものではなく参考にしながら体に合った薬を探していくこととなります。

慢性便秘症の診療フローチャート

現在臨床で使用される薬剤

  1. 浸透圧性下剤
    塩類下剤:酸化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム
    糖類下剤:ラクツロース、D-ソルビトール、ラクチトール
    浸潤性下剤:ジオクチルソジウムスルホサクシネート
    高分子化合物:ポリエチレングリコール(PEG)
  2. 上皮機能変容薬
    ルビプロストン、リナグルチド
  3. IBAT阻害薬
    エロビキシバット
  4. 消化管運動機能改善薬
    5-HT4受容体刺激薬、モサプリド*便秘症に保険適応なし
  5. 漢方薬
    大黄甘草湯、大建中湯
  6. ナルデメジン
    オピオイド(医療用麻薬)による薬剤性便秘に対してルビプロストンともに選択肢となる薬剤です。
  7. 刺激性下剤
    アントラキノン系:センナ、センノシド、ダイオウなど
    ジフェニール系:ビザコジル、ピコスルファートナトリウムなど

刺激性下剤は耐性と習慣性が問題となります。長期使用で大腸メラノーシス(melanosis coli:MC)を起こします。大腸メラノーシスまで行ってしまうとどんな便秘薬も満足するほど効果が出ません。皮肉にも便秘薬が難治性の便秘を作り出してしまうのです。ジフェニール系の方がアントラキノン系より起こりにくいと言われています。そのため刺激性下剤はオンデマンド処方(頓服)でのみ使用すべきで、使用するならピコスルファートなどのジフェニール系の方がまだましだと言われています。刺激性下剤の依存に一度陥ってしまうとなかなか満足のいく排便を得ることが難しくはなりますが、長期に中止すれば改善してくるという報告もあり、基本に返り、刺激性下剤の使用を止め、PEGや酸化マグネシウムなどの浸透圧下剤や上皮機能変容薬やIBAT阻害薬などを組み合わせて気長に対応し続けるのがよいでしょう。もちろん、心理療法や食事療法、生活習慣改善も重要になります。

大腸メラノーシス

余談ですが、正常な大腸粘膜にしか色素が沈着しないことから腺腫性ポリープには沈着しないため腺腫性ポリープはメラノーシス粘膜の中に孤立性に白く浮き出ます。そのため皮肉なことに、もともと発見しにくい平坦型の腺腫は大腸メラノーシスの患者様では見つけやすくなります。

大腸メラノーシスと腺腫性ポリープ

機能性便秘症

器質性、薬剤性、症候性の便秘症が否定できたら機能性便秘症という診断になりますが、より心理的要因の影響が強く、腹痛を主症状とする場合は過敏性腸症候群便秘型(IBS-C)と診断されます。機能性便秘症と過敏性腸症候群は連続したスペクトラムと考えられる疾患であり、明確に鑑別するのは困難です。過敏性腸症候群の治療については別項で解説しておりますのでここでは機能性便秘症の治療についてご説明します。
機能性便秘症と診断したらさらに細かく診断を詰めていくために病態機能評価を行っていきます。簡便な検査として腹部超音波検査やCT、MRIといった画像検査があります。これらを用いて直腸内に硬便やガスが貯留しているかどうかを確認することで、排便困難型(便排出障害型)排便回数減少型を見分けることができます。特殊な検査として、排便造影検査や直腸肛門内圧検査やバルーン排出検査などがありますが、クリニックや一般病院で行うことは稀です。排便回数減少型は大腸通過時間により大腸通過正常型大腸通過遅延型に分けられます。臨床的には排便困難型と排便回数減少型を見分ければ治療の流れが見えてきます。

慢性便秘症に対して大腸カメラをする際に注意すべきこと

当院は大腸カメラの専門クリニックですので慢性便秘症の原因鑑別のために大腸カメラを行うことがあります。その大腸カメラの安全性を担保するという観点でお話しすると、慢性便秘症の方には巨大な進行大腸癌と高度の排便困難型(便排出障害型)を見出すことが安全な大腸カメラを実施する上で重要です。大腸下剤前処置の前に腹部超音波検査を実施させていただき、直腸内に硬便やガスが貯留している所見がないか確認します。もし、排便困難型でその所見が高度であれば前処置の前に浣腸や摘便を実施することで大量の下剤前処置で腸閉塞や腸管穿孔が起きるリスクを低減できます。また重度の便秘症のなかには高度腸管狭窄を呈する進行大腸癌が無視できない割合で含まれており、そういった方に前処置を行ってしまうと腸閉塞や大腸穿孔をきたし、最悪の場合患者様の病態を著しく損なう恐れがありますので、事前に腹部超音波検査を実施させていただいております。巨大な進行大腸癌は腹部超音波検査で事前に疑うことがある程度できます。そのため、慢性便秘症の症状が高度な方については、自宅下剤飲用はお断りさせていただいております。午後枠で検査予約をお取りしていただき、朝の診察時間(9:00~10:00)にお越しいただき、腹部超音波検査を行ってから前処置が可能かどうか判断させていただきます。申し訳ございませんが、同日安全に前処置が実施できないと考えられる進行大腸癌を疑う所見があった場合は、当日の検査はキャンセルとし、適切な医療機関へご紹介させていただきます。

慢性便秘症に対して大腸カメラをする際に注意すべきこと