腸内細菌叢の乱れのことをディスバイオーシスといいます。悪玉菌が増えて善玉菌が減る状態と簡単に理解していただければよいと思います。
過敏性腸症候群、慢性便秘症、慢性下痢症、機能性ディスペプシアなどの機能性胃腸疾患の原因の一つが腸内細菌叢のディスバイオーシスだと言われています。
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)、食物アレルギーや運動誘発アナフィラキシーなどのアレルギー疾患、関節リウマチ、クロストリジウムディフィシル感染症、COVID-19をはじめとする感染症に対する免疫力低下などの原因の一つが腸内細菌叢のディスバイオーシスだと言われています。
糖尿病、肥満症、脂肪肝、脂肪性肝炎、骨粗鬆症などの代謝疾患の原因の一つが腸内細菌叢のディスバイオーシスだと言われています。
次世代の期待されている善玉菌としてAkkermansia(アッカーマンシア)があります。今後の創薬に注目です。
食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、膵癌などの発生や免疫チェックポイント阻害薬の有効性にも腸内細菌叢のディスバイオーシスが関与していると言われています。TanoueらはPD-1抗体の抗腫瘍効果を高める11菌種を報告し(Nature,565:600-605,2019)、腸内細菌叢から抗腫瘍薬の効果を予測し薬剤を選択できる未来が現実味を帯びてきました。世界中がこの分野に着目しています。
脳腸相関という言葉があるように、脳と腸は密接に関与していることが古くから知られていました。うつ病や認知機能異常、多発性硬化症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、自閉症関連疾患などに腸内細菌叢のディスバイオーシスが関与していると言われています。
慢性腎臓病(CKD)、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、脳梗塞や脳出血などの脳卒中、高血圧症といった動脈硬化に関する疾患の原因の一つが腸内細菌叢のディスバイオーシスだと言われています。
不妊症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症、細菌性膣炎などの婦人科疾患の発症にも腸内細菌叢のディスバイオーシスが関与していると言われています。
アスリートのパフォーマンス低下、慢性疲労症候群、不眠などの睡眠リズム障害にも腸内細菌叢のディスバイオーシスが関与していると言われています。