上の図は大腸癌への発癌経路の代表的4経路を示したものです。
こちらの図は患者様にわかりやすく細かいことは省いて大まかな内容を理解していただくために作図したものです。
- 大腸癌の90%は腺腫というポリープに遺伝子異常が加わって発生します。
- 大腸癌の5%は過形成性ポリープに遺伝子異常が加わり、SSLになり、さらに遺伝子異常が加わることで大腸癌に変わっていきます。
- 緑の破線で囲ったところのポリープが大腸癌の原因の95%程度を占めています。つまりこちらのポリープを切除することで大腸癌の95%は予防できるという事です。
- 一般的に癌の前の前のポリープである過形成性ポリープはその全てがSSLに進展するわけではないため経過観察が一般的ですが、必ずしも内視鏡的経過観察を万人が受けるわけではないことから患者様が切除をご希望された場合は切除することがあります。
- 腺腫とSSLは見つけたら小さくても癌化のポテンシャルを持つ前癌病変であるため切除することが基本となります。
- ポリープを全て切除してもポリープ以外からの発癌経路③④もあるため大腸カメラを定期的に受けたからと言って100%大腸癌にならないわけではありません。また、SSLは半透明の扁平なポリープとして存在することが多いため全てが目に見えるわけではなく、接線方向やひだの裏など見えにくいところに存在すれば発見できないこともあるため一定数が見逃し癌の原因となります。
- 一般的に腺腫を切除した人は3年毎に大腸カメラが推奨されますが、個数が多かった方や癌又は高異型度腺腫などの細胞異型の強い腫瘍ができた方や家族歴がある方は1~2年と少し短めに内視鏡経過観察を行うことも考慮すべきです。SSLが多発した方は、見つけられていないSSLがあるのかもしれないことを念頭に1~2年毎に大腸カメラを受けるのがよいと考えられます。
- 慢性炎症からの発癌経路③は主に潰瘍性大腸炎です。潰瘍性大腸炎の罹病期間が長くなると特に全大腸炎型では炎症性発癌というポリープを介さない癌が発生することがあります。
- de novo発癌という④の経路は予想も予防もできない癌で、正常粘膜からいきなり癌細胞が生まれるという極めてまれな発癌経路です。これもインターバルキャンサーの原因となります。
- ③④の経路は予防はできず早期発見するしかありませんが、定期的に大腸カメラでポリープ切除後のフォローアップを受けている限り早期発見できることが多いため大腸癌の死亡リスクは極めて0に近づけることができます。
- 最後に大腸癌の予防と早期発見には大腸カメラは欠かせないことを強調します。