血液検査・心電図・レントゲン・便検査・尿検査・腹部超音波検査・CT・MRI・胃カメラ・大腸カメラ・小腸カプセル内視鏡・小腸内視鏡・超音波内視鏡検査・ERCP・胆道鏡などがあります。病気の90%近くは病歴と診察から診断を絞ることが可能で、残りの可能性を検査で詰めていきます。基本的には体に負担の少ない検査から順番に行っていきます。
消化器内科
消化器内科
消化器内科は口から肛門まで一本の消化管全て(食道・胃・十二指腸・空腸・回腸・結腸・直腸・肛門)と消化管内に消化液を送り出す肝臓・胆嚢・膵臓を診る診療科です。消化器内科の中にも上部消化管を専門にする先生から当院のように下部消化管を専門にする先生、肝胆膵を専門とする先生がおります。
消化器内科は全診療科の中でも患者発生数が多い診療科です。患者数が多い分、消化器内科医も相当数おります。消化器内科がない総合病院はほぼありません。クリニックも都市部ではそこら中に点在しています。どこでも発生する病気からとても稀な病気まで幅広く取り扱うのが消化器内科です。どこにでもある診療科なので地方でも受診には困らない科です。誰しもが一生に一度は関わりえる診療科です。
血液検査・心電図・レントゲン・便検査・尿検査・腹部超音波検査・CT・MRI・胃カメラ・大腸カメラ・小腸カプセル内視鏡・小腸内視鏡・超音波内視鏡検査・ERCP・胆道鏡などがあります。病気の90%近くは病歴と診察から診断を絞ることが可能で、残りの可能性を検査で詰めていきます。基本的には体に負担の少ない検査から順番に行っていきます。
肝機能や腎機能、黄疸の有無、炎症の有無、感染症の種類の推定、自己免疫の関与の可能性など様々な情報が得られます。
上下行結腸の壁肥厚や小腸のガス像などから大腸炎、虚血性腸炎、小腸炎、腸閉塞などの診断に有用です。
非常に有用なツールです。CTのように被爆もせず無侵襲に腹部の全ての臓器を満遍なく観察することができます。超音波はガスで弾かれるため消化管の情報は限定的で、ガスが多い時は他の臓器も見にくくなります。CTのように全てが常に見えるわけではありません。一方、肝臓、胆嚢に関しては腹部超音波検査の方がCTよりもよく見えることがあります。
腹部臓器の診断に最も有用な検査の一つです。腹部臓器の全てが写ります。造影剤を点滴しながら行う造影CTでは血流情報が得られ、組織間のコントラストが付き、詳細な画像診断が可能となります。造影剤はアレルギーが20人に1人ほど起き、アナフィラキシーが2500人に1人ほど起きるため注意が必要な検査です。元々、アレルギー体質の方や気管支喘息がある方は造影剤アレルギーが起きる確率が少し高くなります。過去にヨード造影剤にアレルギーがでた方には有益性が危険性を大きく上回る場合を除いて基本的に禁忌となります。
MRIは時間のかかる検査のため動く臓器の画像診断には不向きです。しかし、空間分解能が高く、より微細な病変の評価に有用です。肝臓や膵臓の精査としてよく用いられます。MRIも造影剤を用いた造影MRIが精密検査として行われることがあります。MRCPは胆管・膵管の画像を再構成する検査で、総胆管結石の診断や膵腫瘍の主膵管との位置関係を評価したりするのに用いられます。
内視鏡を口または鼻から挿入し、十二指腸下行脚までの消化管内部の情報をとる検査です。麻酔を用いる検査です。
下剤前処置を行い、消化管内を空にした状態で、肛門から内視鏡を挿入し、回腸末端部~肛門までの内側の情報をとる検査です。見つけた腫瘍性ポリープは同時に切除可能な検査です。世界第2位の大腸癌大国である日本ではもっともっと普及させるべき検査です。現在毎年500万人程度が大腸カメラを受けてくださっていますが、その多くはリピーターの方で、まだまだ受けたことが無い方が日本には大勢いらっしゃいます。多くの受けたことのない方に大腸カメラを受けていただくことで日本の大腸癌死亡者数を減らすことができます。
小腸は暗黒領域と言われた時代もありました。小腸カプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡の発明で、これまで病気はできないと言われていた小腸にも多くの病気が存在していることが分かってきました。とはいえ、胃カメラ・大腸カメラで観察できる範囲にほとんどの消化管疾患が発生するというのは事実です。小腸からいきなり調べることはありません。まずは胃カメラと大腸カメラをしてみて、それでも出血源が分からないときなどに行う検査です。
小腸カプセル内視鏡は見るだけしかできませんが、小腸内視鏡は直接病変部まで内視鏡が到達するため組織生検や止血などの処置が可能となります。富士フィルムメディカル社のダブルバルーン小腸内視鏡が小腸内視鏡のスタンダードです。OLYMPUS社のシングルバルーン小腸内視鏡もありますが、操作性はダブルバルーン小腸内視鏡に劣ります。
内視鏡先端に超音波検査機器がついている特殊な内視鏡を用いて行ったり、内視鏡の鉗子孔から超音波検査機器を挿入して行ったりする検査です。消化管の壁の層構造や消化管に隣接する臓器の詳細な検索や組織採取やドレナージ治療を可能とする検査治療機器です。
側視鏡という特殊な内視鏡を用いて十二指腸乳頭から胆管や膵管へアプローチして検査や治療を行うものです。
ERCP時に側視鏡から胆道鏡という細い内視鏡を胆管に挿入して、胆管内の結石を割ったり、腫瘍から組織を採ったりできる器具です。
大腸癌は一般的には遺伝しません。遺伝性大腸癌(HNPCCやリンチ症候群)というのもありますが、全大腸癌の1%未満です。大腸癌になりやすさは受けついでいますが、それは遺伝的なところもあれば、生活環境や生活習慣を共有しているという側面もあり、一概に全ての方に大腸癌へのなりやすさが受け継がれているわけではありません。
しかし、大腸癌の家族歴は大腸癌のリスクファクターの一つです。大腸癌の家族歴を持つ方は最低でも便潜血検診は毎年行ったほうがよく、40代に1回、50代に1回、60代に1回などのように時々大腸カメラを組み合わせることをお勧めします。
「大腸癌にならない」を徹底するなら100歳まで生きるとしたら93歳くらいまでしないといけないことになりますが、そこまでは求めなくてもよいと思います。「大腸癌で亡くならない」を目標にしたとしたら100歳まで生きるとしても85歳くらいまでで十分だと思います。もちろん100%を補償することはできませんが、超高齢者の大腸カメラとなると麻酔のリスクや絶食や休薬に伴うリスクが高くなりますので現実にはどう長くても85歳まででよいと思います。一般的には80歳までで大腸カメラでの定期フォローを終了しているところが多いと思います。しかし、以前、95歳の方で認知症もなく、お元気に全国を自力で旅行して回る方が、これからも不安なく旅したいから大腸カメラをしてくださいといって私の所に受診された方がおります。結局この方は大腸カメラで粘膜内癌が見つかりました。私は非常に迷いました。ESD(内視鏡での早期癌の切除法)で根治できますが、根治しなくてもこの方の年齢から予想される最大余命を考えても大腸癌がこの人の予後規定因子にならない可能性の方が高いわけです。命に関わらない大腸癌を切除するためにこの方を危険にさらすのかという自問自答を繰り返しました。患者様が幸い認知症もなく、人生の全てを受け入れている方だったからこそリスクとベネフィットを話会うことができました。患者様は「先生の技術を信じています。私はこれからどれだけ旅行ができるかわからないの。先生、私は例えこの癌が私の命を奪わないと知っても、癌という病魔がお腹のなかにいる状態では旅行を心から楽しむことができないのよ。先生が私のために悩んでくれるのはわかるけれど、先生を信じているから切って頂戴」。大先輩にそう言われてしまい結局、ESDを行いました。その後も楽しそうに土産話を外来で語ってくれました。この方に教えられました。年齢で区切るべきではないと思います。大腸癌が奪うのは命だけでなく、健全な心も奪ってしまうのです。もちろん年齢という大きな壁は十分意識して選ばなければならないのですが、最終的にいつまで大腸カメラを受けるべきかという答えは、患者様自身が「もう大丈夫」と思うときまでだと思います。
そういった大腸内視鏡検査後まもなくして診断される大腸癌をインターバルキャンサーといいます。大腸内視鏡検査での大腸癌の予防効果は100%ではありません。大腸癌のなかでも大腸腺腫やSSLといった腫瘍性ポリープから発癌するタイプのものはそれらの腫瘍性ポリープを全て切除することで大腸癌の予防ができます。それら腫瘍性ポリープから発生する大腸癌は全大腸癌の90-95%を占めます。しかし、5~10%はポリープを介さずに正常粘膜や慢性炎症粘膜から突然発癌することがあります。これらの大腸癌は大腸内視鏡検査で予防することができません。早期発見するしかありません。
さらに大腸内視鏡医毎の内視鏡検査の質に大きなばらつきがある現実も変えようがありません。ポリープの発見率も異なりますし、早期大腸癌の検出率も異なります。大腸内視鏡検査を始めたばかりのトレイニーの先生もいらっしゃいます。逆に内視鏡専門医とはいえども、キャリアのなかでたまたま学会の認定施設に長く在籍していて内視鏡は時々しか握らないものの受験資格を満たしたためペーパー試験を通過して専門医資格を持っている方も一定数いらっしゃいます。どんな先生に大腸カメラをしてもらいたいですかと聞かれたら、私はいつもたくさんやっている先生に検査を行ってもらいたいと思います。専門施設が全てではないと思いますが、大腸カメラに特化した診療形態をとる当院ではスタッフも内視鏡医も一定の技術を習得・維持しやすくなります。インターバルキャンサーの問題を少しでも解決するために大腸カメラは経験豊富な内視鏡医に行ってもらうのがよいでしょう。それでもインターバルキャンサーは0にはなりません。それは今後の内視鏡界の課題であります。