当院は大腸癌で亡くなる方を限りなく0に近づけることを掲げておりますが、胃癌で亡くなるリスクをコントロールすることも重要な使命だと考えています。また現代病である逆流性食道炎も適切に診断できます。
胃カメラ
胃カメラ
胃カメラは上部消化管内視鏡検査、胃内視鏡検査、胃・十二指腸ファイバースコピーなどと呼ばれることもある検査です。
胃カメラと聞くと胃しか見ない検査のように聞こえますが、実は口腔内、咽頭、口頭、食道、胃、十二指腸と複数の部位の観察を網羅的に行う検査です。胃が痛くて受けた胃カメラ検査であっても口から十二指腸まで全て診てもらえる検査です。耳鼻科領域の咽頭癌や喉頭癌の多くは消化器内科での胃カメラ検査で診断されています。
当院は大腸癌で亡くなる方を限りなく0に近づけることを掲げておりますが、胃癌で亡くなるリスクをコントロールすることも重要な使命だと考えています。また現代病である逆流性食道炎も適切に診断できます。
嘔吐反射が頻繁に起きると後述のマロリーワイス症候群の危険性が高くなります。麻酔をかけることで嘔吐反射が極めて少なくなります。
患者様にとってはきついかきつくないかの1点が最も気になるところだと思います。どんなに丁寧に見てもらっても、きつい検査であったら二度と受けたくないと思うでしょう。その方がその先胃カメラを受けなくなってしまった胃癌の発見機会を失ったことになります。もしそうなってその方が胃癌で亡くなったとしたら、苦しませた内視鏡医の責任だと思います。大腸カメラも胃カメラも同じですが一回の内視鏡だけでは癌のリスクコントロールは十分にできません。定期的に受けてもらって最大の効果を発揮する検査なのです。
本来胃カメラは全くきつくない検査であるべきです。きつい検査であった場合すべての原因は内視鏡医にあります。麻酔薬の選択、麻酔の量、麻酔のタイミングなどをいつも同じではなく患者様に合わせなければなりません。人によって体格も代謝も異なるわけですから同じ麻酔法でよいわけがありません。その方に合った麻酔法を毎回考えながら行うことでほとんどの方の胃カメラ検査を苦痛なく行うことができます。
一方、麻酔の副作用に呼吸抑制、循環抑制、アレルギーなどの副作用が付きまといますが、外科、救命救急、ICUでの治療経験が豊富で気道確保や呼吸循環管理に精通した医師が麻酔をかけますのでリスクは最小限にコントロールされています。
当院の胃カメラは最新式の画質のよい細径内視鏡で行います。胃癌の診断は非常に難しくできるだけ画質の良いものの方が診断しやすいためです。最近では技術の進歩で細径の内視鏡の画質が飛躍的に向上しています。太い内視鏡の方が画質がよいとおっしゃる先生もおりますが、最新式ではそれほど気になる差はありません。1世代前の内視鏡までは太径の方がよいと考えていますが、最新式から細径でもよいと考えています。また噴門周囲のスコープ反転操作下での観察性は細径の方が圧倒的によいです。胃癌の切除治療(ESD)を行わないクリニックでの太径の存在意義は以前よりもなくなってきています。
胃カメラの合併症の一つにマロリーワイス症候群という噴門部付近の食道・胃粘膜に裂創ができて出血する合併症があります。これは太径の内視鏡の方が、わずかに頻度が高いです。1世代前の内視鏡なら画質を優先して太径で行っていましたが、現在の最新式内視鏡では十分に早期胃癌を発見できる画質を担保できているため安全性に配慮して細径を選択しております。
胃カメラを一度も受けたことがないということは、将来の胃癌リスクが把握できていないということです。胃カメラを受けることでピロリ菌未感染胃、既感染胃、現感染胃とそのダメージの程度(萎縮性胃炎の程度)を知ることができます。もしピロリ菌感染があるなら除菌は若い方が、胃癌抑制効果が高くなるため、できれば20代で1度受けることが理想的です。日本の胃癌健診は一般的に40歳からスタートしますが、40代でピロリ菌を見つけて除菌してもすでに胃へのダメージは胃癌が十分発生し得るほどに蓄積してしまっている可能性があります。特に家族内や乳幼児期を一緒に過ごした方にピロリ菌感染者や胃癌罹患者がいる場合は20代で積極的に受けていただくことをお勧めします。
腸内細菌を形作るため多種多様な細菌を受け入れて腸内常在細菌叢を形成していく免疫寛容時期の2-3歳までにピロリ菌が胃に入ると慢性感染を起こします。成人してからピロリ菌が胃の中に入ると激しい免疫応答の結果、急性胃粘膜病変をきたして排除されピロリ菌は慢性感染することがほとんどありません。ピロリ菌はわずかな炎症を長きにわたって胃に起こし続け胃の上皮細胞の遺伝子にエラーを蓄積していきます。ピロリ菌は感染期間の長さに比例して萎縮性胃炎が前庭部から小弯側を進展し、最後は体部の大部分に進展していきます。つまり萎縮性胃炎の進展度が高度なものほど感染期間が長く、胃の上皮細胞の遺伝情報に多くのエラーが蓄積していることになります。当然遺伝情報のエラーが多ければ悪性腫瘍が発生するリスクが高くなります。
ホットフラッシュといいます。アルコールの代謝酵素であるアルデヒド脱水素酵素2の活性が弱い方がホットフラッシュを起こします。このタイプの方が日常的に飲酒を続けると食道癌のリスクが極めて高くなります。
胃酸の慢性的逆流があると食道下端の扁平上皮が胃粘膜と同じ円柱上皮に姿を変えます。これをバレット食道といい、この変化が強い方は食道癌のリスクになります。
慢性肝疾患はいずれも最終的には肝硬変に至ります。肝硬変になると食道や胃に静脈瘤ができたり、胃の毛細血管拡張をきたし貧血の原因となったりします。慢性肝疾患がある方には定期的な内視鏡検査が勧められます。
NSAIDsと呼ばれるタイプの鎮痛剤はCOX-1阻害を介して胃粘膜のプロスタグランジンE2の産生量を低下させ、胃粘膜保護作用が低下します。頚椎症や関節リウマチなどで長期に鎮痛剤を内服されている方は時々胃カメラで粘膜障害が起きていないか確認をした方がよいです。
心窩部痛はよく患者様は胃が痛いと表現しますが、胃が痛いと決めつけることはできず胆嚢や膵臓や小腸・大腸などからの痛みのこともあります。ですが、胃潰瘍などの症状かもしれず調べる価値はあります。また黒色便や黒色吐物、吐血は上部消化管出血を示唆する症状であり、食道・胃・十二指腸に出血するような病変がある可能性が高くなります。体重減少は悪性腫瘍の否定が必要な症状の一つです。胸やけや胸痛は逆流性食道炎のことがありますし、のどの詰まり感は咽喉頭癌や頸部・胸部食道癌の症状のことがあります。
頻度の高い上部消化管疾患のリスク | |
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口腔咽喉頭 |
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食道 |
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胃 |
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十二指腸 |
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1
本人確認を行い検査室へ入室します
2
消泡剤入りの水をコップ一杯飲んでいただき、検査台に仰臥位となっていただきます
3
血圧、脈拍、SpO2モニターを装着し測定します
4
咽頭麻酔を行い(キシロカインスプレー)10秒ためていただいたあと飲み込んでいただきます
5
マウスピースを軽くかんでいただき固定します
6
左側臥位に体位変換します
7
血圧を測定し、問題がなければ麻酔薬を点滴から投与していきます
8
入眠後に胃カメラ検査が始まります
9
麻酔の代謝が早い方や効きにくい方は途中覚醒することがあり、適宜バイタルサインを確認しながら麻酔薬を追加します
10
検査終了後はマウスピースを外し、リカバリールームへ移動して麻酔から醒めるまでしばらくお休みいただきます
保険診療の胃カメラは午前中のみ予約制で行っております。健診大腸カメラ(自費)を実施する方へ自費診療として胃カメラ同時検査をご案内しております。その際、胃カメラの自費診療額は12,540円(税込)となっております。
胃カメラ単独の検診はお断りしておりますのであらかじめご了承ください。
健診胃カメラは、大腸カメラの日に行う検査になりますので大腸カメラの検査前の指示通りにお過ごしいただければよく、胃カメラのための特別な準備は必要ありません。
胃カメラ単独を行う場合は前日の20時までには夕食を済ませてください。
水・お茶・経口補水液は当日の検査予約時刻の2時間前まではお飲みいただけます。抗血栓薬(いわゆる血液サラサラの薬)を常用されている方につきましてはオンライン診療時に指示された期間休薬をしてください。
糖尿病の薬は当日朝中止してきてください。ただし、インスリンを使用している方に関しては一定量を継続すべき場合がありますので事前のオンライン診療で指示を受けてください。
高血圧の薬(降圧薬)は検査当日も内服してきてください。
基本的には抗血栓薬と糖尿病治療薬以外は当日も継続してきていただくこととなります。
当院では経鼻内視鏡を推奨しておりません。全例口からの検査となります。
当院で採用している内視鏡自体は細径という鼻から入れることもできる内視鏡ですが、口からしか挿入しません。経鼻内視鏡は点滴の麻酔をしない場合に経口内視鏡より苦痛が少ないことがありますが、当院は全例に麻酔を推奨しておりますので経口内視鏡でも苦痛が極めて少なくなっております。経鼻内視鏡は鼻腔内を損傷して鼻出血をきたすことがあるため行わない方針です。ご理解の程宜しくお願いいたします。